クローゼットを整理していたら、すごく奥深くにしまいこまれた紙袋の中から前身ごろだけのセーターが出てきた。3年前に付き合っていた人にあげようと思って編んでいたセーターだった。
その人とは結婚の約束もしていたのだけれど、彼が深刻な病気にかかり、わたしに負担をかけたくないという理由で一方的に別れを告げられた。しばらくは納得できなくてメールを送ったり彼のお母さんと連絡を取り合ったりしたけれど、結局お母さんからも「新しい人生を見つけて」と言われて、彼とは完全に離れた。
その後1年以上経ってから、病気が治った彼と1度だけ会うことがあり「もう一度やりなおしたい」と言われたけれど、わたしはすでにハルマと付き合い始めていた(ハルマは彼との事情を知った上で付き合ってくれていた)のでお断りしたのだった。
別れたのは1月だったから、セーターは編みかけのまま2度と手をつけられることなく封印されたのだ。そして今、ふいに発掘されたのも1月。
続きを編んで完成させようか迷ったけれど、結局全部ほどいた。いろんなことが思い出されてちょっと泣きそうになった。セーターは10分ほどで大きな紺色の玉になった。
ハルマとは付き合って2年ちょっとだけれど、セーターを編んであげたことはない。わたしとハルマは「手編みのセーター」というタイプのカップルではないような気がする。そういうの無しのドライな感じの付き合い方だからうまくやってこれたような。手編みのセーターなんてあげたら、たちまち湿度が上がって腐ってしまいそうな気がする。
でもこの毛糸高かったんだよなーと貧乏チックに思い出してしまったので、あげるあてのない、かといって自分で着るあてもないセーターをとりあえず編み始めている。